関口さんが手がけるウェディングブランド『*Chayuka*(チャユカ）』の実例の紹介ページを見ると、あまりに多彩な結婚式のかたちを見ることができて驚きました。結婚式の一言ではくくれないぐらい、自由でいろいろなスタイルを手がけていらっしゃるんですね。

関口 手がけてきたウェディングは、神社や祝言などの和婚から、レストランや料亭、古民家での小さな食事会、広大な敷地でのアウトドアウェディングや、旅館やペンションなどのお泊りウェディングまで…おふたりにあわせて、ほんとうにさまざまです。

『*Chayuka*(チャユカ）』は、関口さんと先輩である齋藤さんと、二人のプランナーによるウェディングブランドネームですが、関口さん自身はどのようなウェディングスタイルを手がけることが多いのですか？

関口 Chayukaのもう一人のプランナー齋藤は和婚を中心にプロデュースしていますが、私は洋婚や屋外などを中心にしたウェディングをプロデュースしています。

例えば…

• 自然を存分に味わえるウェディング（アウトドアウェディング：湖畔や森、庭など）
• 小さな旅のようなウェディング（1泊2日のウェディング：ペンションウェディング・キャンプ場ウェディング・温泉ウェディングなど）
• その土地の香りのするウェディング（伝統文化やその土地のポテンシャルを引き出す：酒蔵でのウェディング・古民家ウェディングなど）

関口 おふたりが選んだ場所の魅力を最大限に活かし、装飾しすぎず、流行に囚われすぎず、何がベストかをおふたりの等身大に合わせて結婚式を作っていきます。
例えば、自然溢れる屋外の会場なら、音楽の選び方も変わります。自然の中ならBGMはいらない選択肢もあるほど、演出もシンプルでいいんです。鳥の声、水のせせらぎ、風の音…それだけでもう十分な贅沢感が得られる演出になりますから。

福島の魅力を活かした自然体、等身大のウェディング

自由な発想でウェディングを決められることは、フリーのプランナーに依頼する大きな魅力だと思うのですが、例えばどんなスタイルでのウェディングが計画できますか。

関口 Chayukaでは自然の中で等身大の結婚式を、二人に合わせてプロデュースしています。衣裳は一着のみ、司会は自分たち、会食の中でケーキカットとお手紙を読むだけ…という、本当にシンプルなスタイルを望まれる方もいます。

また、2部制結婚式もChayukaで人気のウェディングスタイルです。
春に神社で家族や親族だけで挙式をして、秋に友人を招待して屋外で披露パーティを行う、なんていうプランが可能です。
家族とは、伝統に即したスタイルでゆったりときめ細やかなおもてなしがしたい。友人たちとは、福島のリゾート地のような場所で季節も場所もがらりと変えて、楽しくにぎやかに過ごしたい。そんな想いを、時間と場所をがらりと変えることで叶えることができるんです。

関口 神社での神前式なら季節を問わずにできますが、屋外パーティは初夏、秋など適した気候のよい時期を選んだほうがいい。豊かな自然に囲まれた福島という土地柄を、最大限に活かせるプランです。
なかには宿泊まで視野に入れる人もいますよ。ゲストと一緒に一泊二日でペンションや旅館に宿泊して、パーティの翌日はその場所での観光やアクティビティも楽しめるんです。こんなウェディングなら、お子様連れの方も心行くまでパーティを楽しんでいただけるでしょう。

時間も場所も自由自在『 *Chayuka*(チャユカ）』プロデュースの魅力

話を聞くだけでワクワクします！福島の時間も空間も、とことん満喫できるプランですね。おふたりだけでくゲストの方も、当日がとても楽しみになりそうです。

関口 「結婚式にきた感じがしない。旅行のような…息抜きにきた感じですね」と、ゲストの方からも感想をいただくことが多いんです。ウェディングというより『ショートトリップ』という言葉がしっくりくるかもしれません。

Chayukaは福島県を中心にプロデュースを行っているので、おふたりはじめゲストも多くの方が福島に住んでいます。でも、福島の素晴らしさや良い部分って、住んでるとなかなか見えないものなんですよね。
おふたりが選んだ場所が、ゲストの方たちから「こんな素敵な場所があったんだ」と言ってもらえる。結婚式が終わったあとにも、また訪れてほしいという願いを込めてプランを作っているんです。
結婚式以外では足を運べない一般式場と違って、Chayukaでプロデュースした会場は、足を運ぼうと思えばいつでも、何度でも訪れることができる場所ですから。

意味ある会場を選ぶことで地元を深く知る想いにつながる

お話を聞いていると、結婚式の計画の中で、会場選びの大切さがひしひしと伝わってきます。会場選びから相談にのってもらえることは、フリーのプランナーに依頼する最も大きなメリットだと思うのですが、関口さんは新郎新婦と、どのように会場を選んでいくのでしょうか。

関口 会場選をおふたりと探すときは、「なぜそこでやるのか」の理由をまずはっきりさせます。二人の好きな場所、ゆかりのある場所…いろいろな理由があるんですけど、『その会場でやる意味』がはっきりすることで、より結婚式が意味ある時間になるんです。だからまず、おふたりの背景をとことん深堀りする。それから福島中から会場となる場所を探します。

結婚式をやる意味とぴったりあった場所をもとめて、とても広い福島県すべての中から会場を探す…途方もないスケール感です。

関口 そうなんです。宮城や山形の方からもご依頼されるので、福島以外からも探すこともあります。
本当に地元についてをよく知っておかないとできないことなので、常に引き出しはたくさんもっておくようにしています。
ただ、どんなに自分で調べても限界もあります。おふたりにぴったりの場所をさまざまな方からの御縁で紹介してもらうことも、ほんとうに多いんです。
だからいま、私は結婚式を作ることで、人と場所とのつなぎ手になりたいなと思っているんです。

『 *Chayuka*(チャユカ）』のプランナーとして関口さんが気づいたこと

関口 会社所属ではなく独立してから、いちばん強く感じたことは『ウェディングプランナーは場所、ヒト、モノのつなぎ手である』ということでした。

プロデュースした結婚式が終わった後、結婚式後におふたりが何度も会場となった場所に足を運んでくれるんです。
また結婚式準備に携わった方々と新郎新婦のおふたりの交流が、ずっと続いていくことも多いんです。準備に携わるフローリスト、ヘアメイク、フォトグラファー、料理人、クリエイター、会場となる場所を管理する人…。

おふたりにご紹介するのは、ほぼ福島に住むか縁のある人たちです。
すると、装花を準備してくれたフローリストのお店をその後も利用したりと、繋がり続けている。
『結婚式をきっかけに出会った縁がつながりながら生活をしていく』ということを、お客様から教えてもらったんです。

新郎新婦から気づかされたウェディングプランナーとしての役割

ゲストはもともと縁ある人ですが、結婚式をきっかけに、準備をお手伝いをした人とも新たな縁を結ぶことができるんですね。

関口 結婚式の準備の時間はふたりでひとつの大きなことをやり遂げるための、濃厚な時間です。だからその中で出会った人、場所、モノは、とても魅力のあるもののはずなんです。
会場として選んだ土地や建物の魅力、伝統文化などポテンシャルを最大限に引き出すこと。おふたりの結婚式の準備に携わる人をご紹介すること。
それが今後の二人の人生を歩むための糧となってくれることに気づきました。

関口 それからは、会場での打ち合わせの際に、結婚式準備に関わる人全員をおふたりに紹介し、直接会って話をしてもらう機会をセッティングしています。
新郎新婦を中心に準備に関わる人を呼んで、ひとつのプロジェクトをみんなで話し合うんです。ワイワイ楽しい雰囲気の中で、「こういう人たちが準備して関わってくれているんだ」ということが自然に分かるよう紹介する工夫もしていますね。

地元のことも好きになれる。深く知れる。そして結婚を起点に地元に場所と人の新しいつながりができる…今まで、そんな視点で結婚式を考えたことがなかったです。

関口 私自身も独立前は認識が薄かったと思います。
結婚式場やレストランでの結婚式を担当していた頃は、会社の中で決まっている商品やプランなど、提供されているものを使ってウェディングを作っていました。利益を得るためには、決められたもののなかで提案をしないといけない。

フリーになって、お客様を見ていく中で、改めて強く気づかされました。
だから、出会いをきちんとつなぎとめてあげたい。結婚式の準備を通しておふたりが得た経験や人脈が、結婚式後の人生を豊かにしてくれると信じているんです。

『結婚式は自由である』ことをベースに業界を駆け抜けた20年

関口さんの結婚式に対する考え方や自由な発想は、どのような経験から培われていったのですか？

関口 実は、ウェディング業界で仕事を始めた時から『結婚式は場所も、時間も、のびのびと自由であるもの』という想いが一貫してあります。
新郎新婦には、それまで歩んできたさまざまなバックボーンがあります。だから、結婚式をする場所にとらわれるのはおかしい。

というのも、最初に学生アルバイトとしてウェディング業界に入った職場が、19年前としては革新的な、自由に場所もスタイルもプロデュースする仙台のウェディングプロデュース会社だったんです。会場選びからゴルフ場や旅館など、とにかくウェディングスタイルがユニーク。
スタートから結婚式が「こうあるべき」という概念が吹き飛びました。

今でこそウェディングを自由にプロデュースする形態は注目を集めていますが、20年近く前はそんな結婚式も考え方も、都心ですらほとんどなかったと思います。

関口 スタートがあまりに自由な会社だったので、仕事を始めた当初から私の最終目標は『もっと自由で場所にとらわれないウェディングを作ること』でした。まずは勉強する意味合いで、大学卒業後に会社員としてウェディングプランナーの仕事や役割を学ぶことを始めました。

プロデュース会社から始まり、専門式場やレストランで多くの経験を積ませていただき『独立はいまこのタイミングだ』という時期に、齋藤にお声がけいただき2018年で独立したんです。現在のプランナーの仕事も、本当にいろいろな人との御縁で続けてこれたことだとつくづく実感しています。

結婚式は始まりでしかない。だから長い人生で立ち戻れる大切な場所にしたい

さまざまな経験を経た関口さんがプロデュースする結婚式とは、いまどのようなプランニングに進化しているのでしょうか。

関口 私はいま、プロデュースを依頼される際には、結婚式だけに焦点をあててプロデュースしていません。結婚式後のおふたりについても視野に入れて、プランニングと準備に取り組んでいます。

というのも、おふたりの人生にとって、結婚式はあくまで始まりにすぎないからです。
人生の始まりの日に、誰とどういうふうに過ごしたいか。シンプルなことだけど難しいことです。それをとことん突き詰めて作っています。

結婚式を通して二人の絆、ゲストとの絆、場所、携わった人とのつながりも結んでほしい。
そして自分たちが今後も生活していく地元を、もっともっと大好きになってほしいという思いがあります。だから始まりの場所は、人生で何か迷ったときに、立ち止まって振り返って戻れる、ふたりの原点となる場所であるようなウェディングにしたいんです。

人との絆、場所、文化を繋いで人生の出発点に

関口さんがウェディング以外でChayukaで新しく始めたサービスも、そんな思いを強く感じます。結婚式だけで終わりにせず「始まりの場所と時間」を丁寧に記録していくことで、人生を紡いでいってほしいという思いや願いが溢れているプロジェクトなんですね。

関口 『はじまりの日』と『とあるひこしらえびと』のことですね。2020年5月から始めた、Chayukaの新たな試みです。

関口 『はじまりの日』は結婚式をすることもしないことも自由に選べる時代に、結婚したいと想える相手にめぐり逢えた奇跡を心から祝福するプロジェクトです。結婚式をやらない選択をした人も、結婚式をやる人も含め、「名前が変わる日」や「ふたりが夫婦になる日」を、おふたりと周囲の人を含めて、丁寧に映像やフォトも含めて記録していきます。

『とあるひこしらえびと』は、日常の生活の中にある ちょっとだけ特別な1日を応援するプロジェクトです。たとえば 大切な人のお誕生日 結婚記念日 七五三や成人式 といった1日を、家族のおはなしを聴いて じっくりと丁寧につくりあげるんです。“おめでとう”“ありがとう”“ごめんなさい”…そんな気持ちを贈るお手伝いをします。

結婚式をやらない選択もできる時代だから結婚式で人生が豊かになる

関口 結婚式はいま『やってもやらなくても、どちらでもいいもの』という認識が広がっています。コロナ禍でますます「やらなくてもいいのでは？」と考えている人も増えているでしょう。
でも挙げることを選択したからには、二人の今後の人生が豊かになるものであってほしい。
結婚式は、人生を豊かにするものです。
だから、これから二人が生きていく、大切になる土地の香りがする結婚式を作り続けたいと思っています。

フリーウェディングプランナー【関口美沙子】profile