大切に受け継ぎたくなる上質なウェディングドレスで、女性の自然美をより美しく見せる。ドレスデザイナー・堀田綾子

更新日:2021.10.12

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一生に一度の晴れやかな日に新婦を美しく包むウェディングドレス。デザイナーの堀田綾子さん自らデザイン、縫製まで手がけるLa bon.では、結婚式が終わってもずっと大切にしたくなるドレスを作っています。

「それぞれの女性が持つ自然美をドレスで引き出したい」。そう語る堀田さんに、デザイナーとしてのこだわりや仕事をするうえで大切にしていることについてお話しを伺いました。

ドレスのオーダーメイドが当たり前の文化になるように

このインタビューの前に堀田さんが手がけたドレスの写真を見せていただいたのですが、どれもため息がでるほど素敵でした。このようなドレスを制作するようになるまで、どのような道のりを歩まれたのですか。

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堀田 服飾の専門学校に通っていたのですが、その頃からインポートのウェディングドレスに惹かれていました。

その後、アパレルブランドが経営していた飲食店やセレクトショップで接客のお仕事をしていました。お仕事はとても楽しくて、特に新店舗の立ち上げにはやりがいを感じました。

仕事っておもしろい、働くって楽しい。だったら、好きな仕事をしたい。そう考えたらやっぱりウェディングドレスに関わる仕事をしたいと思って、この業界に身を置くことになりました。

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どのようにドレスデザイナーとしてのキャリアをスタートさせたのでしょうか。

堀田 最初に、インポートのドレスやファッションブランドのドレスをレンタルする会社に入りました。本当に素敵なドレスばかりだったのですが、やはり海外のドレスだと日本人の体に合わないことも多かったんです。

その場合、サイズのお直しには限界があり、それが自分の中で納得できないというか、ご新婦様を100%の気持ちで送り出せないと感じていました。もちろん、ハイブランドのドレスを購入するよりもレンタルはかなり費用を抑えられるので、そこは大きなメリットなのですが。

ドレスをオーダーメイドしたいご新婦様はたくさんいるということも感じました。だから、ご新婦様が本当に着たくて身体に合ったオーダーメイドのドレスを着ることができるのではないか、と考えるようになりました。

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堀田 専門学校でもドレスは制作していましたがさらに深く学ぶため、独立する前提でMaison SUZUに入り、縫製やパターン技術を学びました。そうして約4年の修行を経て、自分のブランドであるLa bon.を立ち上げました。

日本では、結婚式にドレスをオーダーするという考えがまだまだ浸透していないので、それが当たり前の文化になるといいな、と思っています。

一度きりではなく形を変えてずっと愛されるドレスを作りたい

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女性にとって結婚式のドレスをオーダーするのは夢のようなお話なのですが、La bon.ではどのような流れでドレスを作るのか詳しくおしえてください。

堀田 お問い合わせをいただいたら、一度お会いしてどんなドレスを作りたいかヒアリングをさせていただきます。それに対してLa bon.ができることを考えていきます。

具体的には、オーダー前にデザイン画を3〜5パターンくらい実際に見ていただいて、オーダーするとしたらどれにするのかを決めていただきます。これがだいたい挙式4ヶ月前です。

そのあと、採寸を行い、トワルという仮の布で作ったドレスを作り、フィッティングしていただきます。この段階でデザインのディテールを決めて、そのあと、最終フィッティングと合計4、5回の打ち合わせでドレスを完成させます。

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ていねいなヒアリングと綿密な打ち合わせを重ねてドレスが完成するのですね。堀田さんご自身の手作業で縫われていく過程を想像すると、本当に一生ものの特別なドレスになりそうです。

堀田 ありがとうございます。だからこそ、一度だけしか着られないのはもったいないというか、せっかくオーダーメイドでご自身にぴったりのドレスを作るならずっと大切にしてほしくて、結婚式の後にちがう形で楽しんでいただけるような工夫もしているんです。たとえば、結婚式のあとに誕生した赤ちゃんのベビードレスにリメイクしたり。

打ち合わせの段階で、結婚式で着たあとにそのドレスをどうしたいかまで話を聞いて、それを踏まえてドレスのデザインをする場合もあります。

ドレスは結婚式だけと思い込んでいましたが、その後も活用できるなんて、考えるだけでわくわくします。ベビードレス以外にもなにか例はありますか?

堀田 一着だけど2wayのドレスをお作りしたことがあります。挙式ではシンプルなシルクのドレスとしてお召しいただき、お色直しではその上から総レースのオーバードレスを重ねて着用する事で、1着のオーダーだけど雰囲気をガラッと変える2wayのドレスに仕上がりました。

あとは、普段着として着られるようなドレスを作りました。夏に毎年ワンピースとして着られるように素材をコットンにしたドレスや、ちょっと特別な日のブラウスとして使えるように工夫したデザインのドレスもあります。

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▲お色直し用コットン素材のワンピース型ドレス

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▲披露宴用シンプルなシルク素材のウェディングドレス


堀田 結婚式が終わったからといって、ドレスを過去のものにしたくないという気持ちがあります。これは結婚式全体に言えることかもしれませんが、結婚式やドレスはどうしても消費的になってしまいがち。そして、終わったら関心がなくなるというか、過去のものになりがちです。提供側にもそういう雰囲気があるのかもしません。

でも、そうじゃない選択肢があってもいいと思うんです。もちろん、結婚式というハレの日の特別感は大事にしたうえで、そのあともずっと愛してもらえるようなドレスを作りたいです。

フォーマルなウェディングドレスにどうファッション性に落とし込むか

そのような思いがLa bon.のドレスづくりで大切にされているのですね。La bon.のデザインにはどんな特徴がありますか?

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堀田 まずは、ご新婦様が普段どんなファッション性をお持ちになっているのかを重視しています。ドレスのトレンドは移り変わりが早いし、流行を追うのはファンションと同じ。でも、洋服とちがうのは、ウェディングドレスは一生に一度のフォーマルな要素が大きいということです。

ですので、ご両親やご友人たちからどのように見られるかを意識して、上品さやフォーマル感を忘れないようにデザインしています。カジュアルなもので、というオーダーがあっても、素材を上質なものにしたり、カジュアルの中にも上品さが感じられるような工夫をしています

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たくさんの人が関わる結婚式だからこそ、フォーマル感は大切ですよね。

堀田 はい。式のスタイルは必ず確認します。大勢が集まるのか、そうじゃないのか、どんな場所なのか。そのうえで、クラシカルさ、フォーマルさの中にファッション性を落とし込んでいくかを考えます。

結婚式はご新婦様がいちばん注目を浴びる日。だからこそ、その日に身につけたドレスをそのあともずっと大切にしてもらいたいです。オーダーならいろいろな工夫もできますしね。

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結婚式でたくさんの人に注目されて、祝福されて、そのあともずっと大切にできるドレス……。思いがドレスという形になるというか、物語が詰まっているのがLa bon.のドレスの特徴なのですね。

堀田 La bon.の個性は大事にしていますが、フルオーダーの場合はデザイナーの自己満足になってはいけないと思っています。押し付けにならないように、お客様がなにを求めているのか、まずはそれがいちばんにあって、それをLa bon. がどう形にするかを考えていくという順序です。

こうした方がいいと思ったらその理由をきちんと説明させていただきますし、逆に、やりたいことをやるとこうなりますよというのは正直に伝えます。そのうえで、最後はお客様に選んでいただきます。

そんな風にドレスをオーダーできたら、すごく納得感もありますし、思いを身にまとうような感覚になりそうですね。

堀田 昔、母と一緒に祖母の着物を整理していたときに、祖母の留袖が出てきたんです。その刺繍がとても美しくて……。なんだか祖母の歩んできた歴史や想いがそこに詰まっているような気がして、本当は処分するはずでしたが私が引き取ることにしました。繊細でていねいに作られたものは受け継いでいきたいと自然に思うのですね。

また当時は庭で婚礼写真を撮ったり、そのままご近所に挨拶回りをしたりと、結婚式はハレの日だけど生活に密着していたような部分もあると思います。一度だけの派手なイベントではなく、日々の暮らしの延長線上にあるような。

物作りをする者として、つい50年前までは当たり前だった「ものを大切にする」という価値観をもう一度見つめ直し、ご新婦様が購入したものへ愛着や責任を自然に感じられるようなドレスを作っていかなければ、と感じています。

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目指すのはインポートと国産を融合させた新しいスタイルのドレス

堀田さんは日常の中でどのようなものからインスピレーションを受けてデザインや縫製をしているのですか?

堀田 シンプルですけど、ドレスを作るのが本当に好きなんです。だから、ドレス作りに関わること、新しいことを考えるだけでわくわくします。ドレスという形になるのがとても嬉しいし、お客様との打ち合わせにも毎回わくわくして臨んでいます。

普段、オートクチュールのコレクションはたくさん見るようにしています。これらはデザインをするためのディテールのアイディアにつながるので。

あとは、街を歩いているときに、つい通行人たちのスタイリングをチェックしてしまいます(笑)。これは、接客やフィッテイングを担当していたときの癖かもしれません。この体型にはこの丈感が似合うな、とか考えながら通行人を見ています。プライベートが仕事というか、あまり区別はしていません。

すべてがドレス作りにつながっているのですね。そんな堀田さんの思いが詰まったドレスを一度身につけてみたくなります。最後に、今後の目標についてお考えをお聞かせください。

堀田 La bon.はこれまでフルオーダーのみのご案内だったのですが、そろそろファーストコレクションを発表したいと考えています。2022年からは、La bon.が提案したドレスの中からお客様が選べるようにしたいです。この形をとれば素材にコストがかかってもその分コストを抑えられるメリットもあります。

もちろん、フルオーダーもこれまで通り作りたいし、ドレスをより自由に選べる選択肢を増やしていきたいです。

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ファーストコレクションが今からとても楽しみです。より選択肢が広がっていきますね。

堀田 どうしてもインポートのドレスと日本のドレスにはギャップがあるので、それを埋めていきたいです。もちろんどちらもいいところがあるので、それを融合させて新しいドレスのスタイルを作っていきたいです。

結婚式も、社会やライフスタイルの変化に合わせてどんどん新しい選択肢が出てくると思います。だから、結婚式にまつわるもの、たとえば写真やヘアメイク、そしてドレスがもっと自由になればいいと思っています。 そしてご購入してくださるご新婦さまが、大切な物は自然と受け継いでいきたいと思えるような、そんな物作りを目指していきたいです。

デザイナー【堀田綾子】profile

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ウェディングドレスのセレクトショップで接客経験の後、ドレスブランドMaison SUZUで縫製技術を学び、2018年よりオーダードレスブランドLa bon.を立ち上げる。

女性それぞれの持つ”自然美”を活かして、フォーマルなウェディングドレスの中にご新婦さまのファッション性を取り入れたウェディングドレスを提案。

La bon.について詳しく知りたい方は
こちら

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