【離島で結婚式①】直島・豊島・小豆島でアート&スローな時間を体験できるウェディングのプロデュース方法とは?フリープランナー・藤内留美さん

更新日:2021.10.01

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穏やかな気候に恵まれた瀬戸内海に浮かぶ、アートの聖地と呼ばれる離島。直島、豊島、小豆島でのステイウェディングには、ハワイや沖縄といった華やかなリゾートウェディングとは異なる魅力があります。「誰と、どこで、どんなふうに結婚式の時間を過ごすのか」…結婚式の原点に立ち戻り、日常の慌ただしさで私たちが忘れてしまったものを思い出す時間にしたいと語る【Fleur Des Pois(フルール デ ポワ)】のフリープランナー兼フローリスト・藤内留美さん。自然溢れる島で自由で開放的に楽しめるウェディングプランは一見シンプル。しかし、さまざまな経験に基づいた、緻密な準備とプロフェッショナルな計算によって、入念にプロデュースされているのです。

直島・豊島・小豆島。リゾートウェディングとは異なる瀬戸内の離島の結婚式の魅力

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以前のインタビューで藤内さんに、瀬戸内の離島を挙式の場として選ぶ新郎新婦の動機をうかがいました。「瀬戸内の島が好きだから大切な人に見てほしい」とのシンプルな理由に驚くと同時に、素敵な理由だと心を動かされました。直島・豊島・小豆島…瀬戸内海の島々の何が、訪れたひとをそんなにも魅了するのでしょうか。

藤内 答えはとてもシンプルです。島には何もないから無になれる。そして時間は豊富にあるからです。
穏やかな瀬戸内の海、ありのままの自然、ゆっくりとした時の流れ、数々のアート。
非日常を求めるのが結婚式であるなら、式場という箱の中でつくる緊張感のある非日常ではなく、島には自然体で心を癒やしてくれる非日常の時間があります。
人とふれあい、島の人の自然な暮らしに寄り添った生活の延長線上にある体験を、結婚式のなかで大切な人たちとともにできるんです。

新郎新婦の動機や、藤内さんのお話を聞くと、離島の結婚式を『ステイウェディング』と表現する理由がしっくりきます。観光やレジャーの整ったリゾート地でつくり込まれたウェディングプランとは、結婚式に求める内容や価値が違うのですね。ただ『島に何もない』環境は離島ステイの大きな魅力ですが、プランを立てる際に依頼者の懸念点や不安点としてネックになるのでは?

藤内 実際にお問い合わせいただく際、新郎新婦から「島では何人ぐらいゲストを招待できるでしょうか」「渡航方法や宿泊先はどうすればいいのでしょうか」とまず聞かれますね。島だからできる内容が限られると思ってしまい、不安になる方もいるでしょう。
島の宿泊施設は限られており、確実に予約をとるためには早めの段取りが必要です。船やタクシーの数は少なく、観光客に抑えられてしまうので、お問い合わせを頂いて最初に宿泊施設、船、送迎の手配を行うのです。

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通常のリゾートウェディングでは、ゲストを含め宿泊手配や渡航手配は基本的に自己手配です。ゼクシィのアンケート調査では手配が面倒でリゾ婚を諦めたカップルの割合はかなり高くなっています。
旅行に関する不安や懸念を真っ先に結婚式準備で解消してくれるのは、依頼側にとっても安心できるでしょう。

藤内 直島、豊島、小豆島での結婚式は、10人から30人程度の少人数のゲストを招待するスタイルが主流です。30人以上の人数もご相談いただければ、どのようなケースでも対応していきますよ。
天候も瀬戸内は日本国内で雨が少なく晴れ日の多い温暖な地域として有名です。
ただ、万が一天候が荒れた場合には、チャーター船が止まってしまう状況までを考慮して、挙式を前日に前倒しするといった早めのジャッジで代案となるプランを提案しています。

直島・豊島・小豆島だから滞在がまるごと結婚式に。ステイウェディングでできること

【直島・豊島・小豆島でのウェディングプラン例】
・島で挙式・披露パーティ・フォト撮影を楽しむ(平均滞在1泊2日)
・島を巡り結婚式だけでなく、周辺の観光もじっくり楽しむ(平均滞在2泊3日)
・島でふたりだけの挙式やフォトウェディングをシンプルに楽しむ(平均滞在1泊2日)

島でのステイウェディングの流れやプログラム、スケジュールを決める際に、藤内さんはどんな点を重視しているのでしょうか。

藤内 島での過ごし方を結婚式ではなく『観光』として考えています。
まずおふたりが希望する島での過ごし方や、体験したいイベント、演出についてヒアリングし、滞在時間の流れを組んでいきます。
滞在日数は2泊3日ぐらいあれば、ツアーのようにいろいろなイベントやアクティビティを盛り込めるのでおすすめです。ゲストには参加したいイベントやタイミングから出席してもらえるように手配します。

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【直島挙式・豊島の結婚式スケジュール・2泊3日ステイウェディング】

時間 スケジュール 内容
前日は高松に宿泊。周辺の香川観光を楽しむ。
8:30~ 直島港に到着、移動
9:00~ 仕度 ・ヘアメイク
・着付け
10:30~ 挙式リハーサル 家族に晴れ姿を見せる「ファミリーミート」後、
挙式リハーサル
12:00~ 挙式、
赤かぼちゃで撮影
「直島キリスト教会」チャペルにて、
挙式後はガーデンや直島のアート作品前でゲストとフォト撮影
13:30~ 直島から豊島へ移動 豊島行きのチャーター船に乗船
13:15~ 豊島のレストランで
披露パーティ開始
「海のレストラン」にて
・あいさつ
・乾杯
・テーブルラウンド
・友人スピーチ
14:00~ 畑に移動して収穫祭 レストラン前にある畑で収穫体験
・トマトバイト
・ガーデンで歓談、散策
15:30~ パーティのクライマックス ・ゲストが収穫した野菜で野菜ビュッフェ
・新婦手紙朗読
・父母に記念品贈呈
16:00~ お開き 引き出物、プチギフトを新郎新婦から手渡しで
16:45~ 豊島浦港出発 チャーター船で直島に向かい宿泊先へ
直島や豊島に宿泊後、翌日は島や周辺の観光を楽しむ。
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藤内 瀬戸内の島は瀬戸内海の限られた区域の中に700以上の島が点在しています。
私が結婚式を手がけている直島・豊島・小豆島の3島の距離は非常に近く、各島間がフェリーで20~30分程度なので、結婚式内で移動するのも可能です。ウェディングロケーションを1カ所だけで考える必要はなく、広い範囲を視野に入れて計画できます。つくり込まれた大手のプランと違って、時間に縛られずに結婚式の1日をフェリー出航の時間まで丸ごと自由に使えるからです。
島で採れたての豊かな食材や、美しいアートスポットも、島で過ごす大きな魅力です。島の結婚式は島での何気ない日常を、特別なイベントとして体験できるのです。

【藤内さんが提案する直島・豊島・小豆島のウェディングで楽しめる演出や体験アイデア例】

・畑で収穫体験ウェディング
どの島にも一面広がる豊かな畑を利用し、結婚式内で野菜の収穫体験が可能。収穫した野菜は披露パーティをおこなうレストランで、野菜ビュッフェや調理してのとれたてを楽しむ。

・アートフォトウェディングツアー
島内に点在する著名なアート作品を巡り、バラエティ豊かなシーンやポーズでウェディングフォトを撮影可能。ふたりきりのフォトツアーでロマンティックな撮影を楽しんだり、マイクロバスを借りてゲスト全員でアートスポットを観光を兼ねて結婚式中にまわったり…自由でアートなフォトツアーが企画できる。

・バスやレンタサイクルを利用した散策ツアーウェディング
島での滞在時間を結婚式だけでは終わらせず島だからこそ楽しめる『1日が丸ごと結婚式』といった贅沢な時間の使い方をゲストに過ごしてもらうための演出アイデア。
美しい島の風景を、レンタサイクル、徒歩、マイクロバスなど島にある移動手段を利用し、会食が始まる決められた時間まで自由に散策。会場で新郎新婦やゲストとじっくり歓談を楽しむのも、もちろん自由。

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離島で最高のウェディング体験を準備するために。藤内さんが培う島の人たちとの交流

離島でのワクワクするプランを聞いて、ステイウェディングへの期待値が高まります。ただ、ほとんどの新郎新婦は結婚式準備を会場から遠く離れた場所で進めなければならないでしょう。打ち合わせや準備の内容を教えてください。

藤内 島の結婚式のプログラムは、とてもシンプルです。そしてご依頼される新郎新婦のほとんどは、東京はじめ日本全国の遠方に住んでいるため、オンラインやメールでの打ち合わせを中心に準備は進行します。

問題は結婚式を彩る備品やアイテムです。島によりますが、船の便の悪い場合もあるので、極力島で島民の方に相談しながら調達します。
ただ、結婚式を一定のクオリティで作りたいと考えると、コーディネート用の備品は質のしっかりしたアイテムを使いたい。しかし島で整う備品は少なく、多くは島外からの持ち込みになるんです。
おふたりの負担が少ないようにどこで手配をし、どのように島に持ち込むか段取りを組むのも島での結婚式の重要項目になります。

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藤内 もちろん、おふたりやゲストに結婚式で島の匂いを感じてもらうために、できるだけ島の中でアイテムや備品を調達したいと私は考えています。そこで『島での人脈作り』が大事になってくるんです。

『人脈作り』! 一般的な結婚式準備では、まったく聞かない言葉です。島の人たちとの交流や親しさは、どのようにウェディングに影響し、準備の手助けとなるのでしょうか。

藤内 お話の通り、一般的な結婚式やリゾートウェディングでは、専門の業者やプロが関わって作っています。
ところが、島のウェディングでは本当に島に住んでいる人たちの協力によって作り上げているんです。島の農家さん、お店屋さん、会場の近くに住んでいるおじいちゃん、おばあちゃん…。
特に豊島はお年寄りが多いのですが、皆さんとても良く協力してくれます。
ここまでくるのに時間はかかりました。私自身が豊島に住んで、直島・豊島・小豆島で協力してくれる人を1人づつ探していきました。

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藤内 例えば、私が手がける結婚式の引き出物で『旬ギフト』があります。
数ある特産物から一人ひとりのゲストに選んでもらい、忘れたころに収穫したばかりの旬の作物や食材がゲストのもとに届くのです。引き出物は島での時間を再びつなぎ、思い出す贈り物として、最高のお楽しみになります。
引き出物に協力してくれる農家さんや生産者の方を一軒一軒訪ねて協力者を増やしていきました。

皆さん最初は「結婚式に使いたい」と説明しても、ぽかんとしていましたが…いまでは結婚式への協力を楽しみにしてくれているんです。
結婚式のフォト撮影中に、島の人たちも集まってきてお祝いを一緒にしてくれたり。新郎新婦だけでなくゲストの着替えの場に、会場近くのカフェを提供してくれたり。
私は結婚式当日は結婚式の立会いだけでなく、おふたりの送迎を行いますが、波止場へフェリーの見送りに来てくれる島の人たちもいます。

結婚式で使うアイテムや備品、ギフトやサービスのひとつひとつか、ら島の人たちの善意や気持ちを感じられる…本当に『ここでしかできない体験』になるんですね。藤内さんの得意とされる、島の自然を活かした装飾や装花といったデコレーションの魅力や技術については、別のページで詳しく紹介させてください!

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藤内さんにとって『直島・豊島・小豆島』でウェディングプロデュースをする意味

藤内さんと話せば話すほど「結婚式は自由でのびのびとした時間でいいんだ」と、どんどん思えてくるんです。いままで感じていた「結婚式はゲストをおもてなししなくちゃ、失礼のないようにしなくちゃ」「結婚式でふたりらしさを表現しなきゃ」と、何かに追い詰められたような考えが、片っ端から崩れていきます。

藤内 綺麗な夕陽、必要最低限のモノたち、人と人が助け合う大切さ…島のウェディングで大切にしている指針は、どれも限りなくシンプルです。結婚式とは、新郎新婦もゲストも、思い切り自由に楽しめる時間でいいんです。
一方で、島での少人数の結婚式は作り手側にとって、ごまかしは一切効かない難しさがあります。

『シンプルな結婚式であればあるほど難しい』とは何故ですか?少人数での結婚式ほど、準備期間も少なく準備タスクも少なく、簡単に計画できるのだと思っていました。

藤内 一般的な結婚式なら、十分な設備の中でパッケージ化され、必要不可欠なアイテムが最初から揃っていて準備は簡単かもしれません。
ところが会場となる離島は、設備も環境もシンプルです。席と席の間隔、音楽の大きさ、選曲、料理と進行のタイング…全てゲストにとって「心地よい」と感じてくれるよう、緻密な計算が必要なんです。

確かに人数が少ないほど、BGMも周囲の環境や料理のおいしさも、周囲の景色も装飾も、ゲストがじっく目にして堪能する時間や機会は増えていきますね。

藤内 大人数で賑やかな結婚式は、作り手側に多少の難があったとしても、会場の盛り上がりでカバーできるでしょう。
ところが、家族だけ、親しい人たちだけの少人数の結婚式では、そうはいきません。
少人数でも会話の弾む距離感を保てるテーブルを揃えたり、バランスの良い装花や装飾を施すのは、先ほどお話した通り、島の備品事情では難問になる場合もあります。

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藤内 また、夕陽のタイミングと料理の出し方も重要です。
直島、豊島、小豆島の夕陽の美しい時間『マジックアワー』を、おふたりとゲストにはぜひ堪能してほしいのです。
しかしベストな状況で実現させるためには、スタッフと自然との戦いなんです。
会場の全員がいい表情をするための、レストラン側の料理の提供時間。夕陽を見るおふたりやゲストを、会場のベストポジションから撮影するカメラマン…。

さらに当日は、ウェディングやパーティを自然の流れに任せ、ゲストの動きや空気を読んで動く。関わるパートナー全員で結婚式ごとに話し合い、回数を重ねるごとにブラッシュアップした進行を作り上げていくのです。
島の結婚式をプロデュースするのは難しい問題も多いですが、やりがいは大きいです。

藤内さんにとっての、離島の結婚式とは?ウェディングプランナーの仕事のやりがいを、どんな時に感じますか。

藤内 新郎新婦とゲストが、普段家族と過ごす時間のように会話をし、楽しんでいる姿を見たときです。
人生の中で忙しくて忘れてしまっている『ちょっとしたできごとや気持ち』を思い出すことで、ふたりとゲストの今後の人生に豊かさをきっと与えてくれるはずだ、と心から感じられる瞬間なんです。

フリーウェディングプランナー【藤内留美】profile

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ウエディングプランナーとして徳島県の結婚式場で300組以上の結婚式を担当。会場専属の装花業者では対応しきれないデザインや装飾があると歯がゆさを覚え、フローリストの道へ。
Mini et maxi flower design(ミニ・エ・マキシ フラワーデザイン)やChristian Tortu(クリスチャン トルチュ)パレスホテル東京にて、結婚式のデコレーションの知識と経験を積む。

2017年にウェディングプランナー兼フローリストとして独立。現在は豊島に拠点をもち、実際に島の空気や島民の人柄に触れながら、それぞれの島の個性を生かしたウエディングをプロデュース。
「島での結婚式を通して、日々の暮らしの中で幸せを感じる瞬間を増したい」との思いから、ウェディングの中には、さりげなく島の日常や島の人との繋がりを感じるエッセンスを盛り込んでいる。

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